XがAの不倫相手であるYに対して慰謝料請求したとき、YがAから「Xとはうまくいっていない」と言う話を聞いていた場合、Yには不法行為が成立しないのですか。 |滋賀県の離婚に精通した弁護士 大津法律事務所

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XがAの不倫相手であるYに対して慰謝料請求したとき、YがAから「Xとはうまくいっていない」と言う話を聞いていた場合、Yには不法行為が成立しないのですか。

XとAが婚姻関係にある夫婦  Aが不倫を行った配偶者  Aの不倫相手がY 事例①

(1)  XがAの不倫相手であるYに対して慰謝料請求したとき、YがAから「Xとはうまくいっていない」と言う話を聞いていた場合、Yには不法行為が成立しないのですか。

この主張は、不倫相手が、示談交渉や訴訟において、主張してくることがあります。
この主張の法的な意味は、以下の通りです。

最高裁は、「甲の配偶者乙と第三丙が肉体関係を持った場合において、甲と乙との婚姻関係がその当時既に破綻していたときは、特段の事情のない限り、丙は、甲に対して不法行為責任を負わないと解するのが相当である」(最判平成8年3月26日)と判断しているため、客観的にXA間の婚姻関係が破綻していなくても、YがAから、夫婦関係はうまくいっていないということを聞き、Yがそのことを信じたので、Yには、慰謝料請求権の発生要件である故意・過失がなく、慰謝料請求権は発生しないというものです。

事案によりますが、不倫相手からのこのような主張は、一般的には認められにくいです。
参考までに以下の裁判例があります。

【東京地判 平成25年9月27日】
「Yは,Aから離婚を考えていることを聞き,Aとの共通のダーツ仲間からも,AとXとの夫婦関係が修復できるような状態でないことを聞いていたという状況下で,Aが,Xと「別れる。」,「必ず離婚する。」と言明したので,Yは,AとXとの夫婦関係は完全に破綻しており,離婚してもおかしくない状態に至っていると信じて疑わなかったと主張するが,Yの主張する状況において,YがYの主張のとおり認識していたことを前提としても,Yとしては,Aの言葉から,XとAとは,別れておらず,離婚もしていないと認識していたものであり,XとAとの婚姻関係が破綻していたと認識していたとまではいえず,そのおそれがあるという程度の認識で,破綻していることを希望していたにすぎないというべきであるから,Yは,Xに対して,不貞行為による不法行為責任を負うというべきである。」と判断した。

【東京地判 平成25年12月17日】 
「Yは,Aから,長期間にわたってXとの不和が続いていた旨を聞かされたこと,Aが心筋梗塞を患ったことから,Aに対して同情の念を抱いた旨主張し,その旨の供述をする。しかしながら,婚姻関係にある一方当事者が,異性に対して自らの家庭が不和であることを告げたとしても,そのことが真実であるとは限らないのであり,Yが,そのようなAの言い分を無批判に受け入れたということもにわかには信用できない。Yの供述する上記事情ないし経緯は,Xに対する損害賠償額の算定に当たって考慮する一事情にとどまるというべきである。」と判断した。

⑵ XがAの不倫相手であるYに対して慰謝料請求したとき、YがAから「独身である」と言われており、YがそのAの言葉を信じていた場合、Yには不法行為が成立しないのですか。

この主張も、Yは、Aが独身であると信じていたことから、Yには、AX間の婚姻関係を破綻させることについて故意及び過失がないという主張です。
Aの言動、AとYが出会った経緯等から、Aが独身であると、Yが信じたことについて過失があったか否かが争点になります。
参考までに以下の裁判例があります。

【東京地判 平成23年 4月26日】
「Xは,Yが,Aとの交際期間中,Aが婚姻していることを知らなかったとしても,Yには,Aが婚姻していることを知らずにAとの不貞関係を続けたことにつき,悪意と同視すべき重大な過失がある旨をも主張する。
しかしながら,前記(3)で判示したとおり,Yが,渋谷のマンションの室内の様子やAの車の内部の様子から,Aが既婚者であることを容易に知ることができたとの事実を認めるに足りる証拠はない。
むしろ,前記1で認定した事実経過(取り分け,Yは,通常は独身者が参加すると考えられているお見合いパーティーでAと知り合ったこと,Aは,Yとの交際期間中,Yに対し,氏名,年齢,住所及び学歴等を偽り,一貫して独身であるかのように装っていたこと等)に照らすと,通常人の認識力,判断力をもってしてはAが婚姻していることを認識することは困難であったというべきであり,Yが,Aの実母に会って同人からAが既婚者であることを聞かされるまでの間,Aが独身であると信じて交際を続けていたことについて,過失があると評価することはできない。」と過失を否定し、YがAと交際し性交渉を持ったこと等がXに対する不法行為を構成するということはできないと判断した。

【東京地判 平成24年 8月29日】
他の証拠の評価をした上で、「そして,Aが,ホステスとして深夜まで勤務し,Yと深夜電話で会話するなどし,Yに対して前夫と離婚して現在は独身であるなどと述べていたこと,YがAの自宅を訪れたことはなかったことなどからすると,YがAと交際していた当時同人に夫がいないと信じたことに過失があったとはいえないものというべきである。」と判断した。

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